文化的な日々

映画、音楽、美術、文学などについて、その日に鑑賞した感想等を中心に書いていましたが、現在は趣味が高じて、クラシック情報、しかもコンクール情報に特化した情報ブログにと変貌を遂げております。どうせ、この道に入ったのならと、日本一、最強コンクール情報ブログを目指す覚悟です。

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6805078d.jpg[1/8 読了]新人物往来社、2005年12月刊行の単行本。同社発行の雑誌「歴史読本」2004年7月号から2005年12月号まで連載され、加筆・推敲がなされて出版された。著者は1949年生まれの60才。1994年の直木賞受賞作家である。

1864年、フランスのボルドーで建造された装甲艦が、数奇な運命を辿り、1889年に日本で解体されるまでの25年間を、江戸幕府崩壊、明治政府の創始期の動きを交えながら、歴史ドキュメントタッチで描く。史実を重視しているだけに、なんか研究論文を読むような味気なさもあるが、中村の巧みな筆致で最後まで飽きることなく読み通せた。

どうしても幕末の躍動期が舞台となるので、話がそちらに逸れても仕方がないと思うのだが、中村はそういう“有名事件”には最小限に触れるだけとし、「甲鉄」を取り巻く海軍周りのことだけを集中的に書いている。これはこれで正解である。いわゆる焦点がうまく絞られているといえる。

原資料は、東京大学史料編纂所に保存されている、『甲鉄艦収領始末』と『小野友五郎日記』。もちろん、これだけでは、作品は成立しない。中村の博学と文章力があってこその著作であることは言うまでもない。地味だが力作である。

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トビタシネマにて。併映は、『デンジャラス・ビューティー2』と『テキサス・レンジャーズ』(時間の関係で観ず)。

はっきりといって、フランス映画っぽさが全面に醸し出されて、小気味よい。37億円の製作費も多分、その大半が衣裳や建物の復元に用いられたのであろうが、それもやはり、私としては非常に嬉しい。

また、そういう雰囲気作りがうまいせいか、時代の空気が見事に捉らえられていた。当たり前だが未舗装の道路、道ゆく紳士淑女のファッション、セーヌ河のたたずまい、鉄道、それにルーブル美術館! これらを見ているだけで、楽しくなってくるのだ。

ルパン役のロマン・デュリスは、明らかにもう一つだが、カフェの爆破や皇帝の暗殺未遂など、派手なシーンは実にうまく撮られており、サロメ監督のセンスの良さが随所に表れていた。

ストーリーも比較的シンプルで、くどくないところもいいし、ネタばれも恐れずに行い、わかりやすさを常に意識した作り手の姿勢に好感が持てる。

日本において、フランス映画はハリウッド製に圧され、往時の勢いがない。これは全世界的な傾向であり、どうしようもないことなのだが、決して良質の作品が減ったということではない。映画の発祥の地として、誇りを持って、数々の香気高い作品を産みだし続けている。この『ルパン』もそういう作品の一つといえるであろう。

だが、興行的に苦しいことは明らか。都市部はともかく、地方では全くダメ。作品のスケールからいって大変残念なことではある。


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なんともはや、私とあろうものが涙を流してしまった! 泣かない、と思っていたが、不覚である。

ストーリーはあくまでオーソドックス、辺見じゅんの原作は、明らかに稚拙極まりなく、佐藤純弥の脚本も決して冴えているとはいえない、というか、はっきりいってかなりひどいものである。

また、今なぜ大和なのか、ということもある。ただ単に戦後60年、大和が沈んで60年ということなのか。う〜ん! 角川春樹がどうしてこの映画を作りたかったのか、ということにも興味があった。ただ単にゼニ儲けの企画なのか?

もともと私は、“大作”大好き人間である。基本的にお金をかければ、そこそこの映画が作れる、と思いたいほう。実際、失敗作といわれる作品も、お金をかけていれば、なにかしら見所があるものだ。たとえば、あの全画面CGの『ファイナル・ファンタジー』にだって、存在価値を認めているのだ。

だが、この『大和』はかなりひどい。製作費25億円 ねぇ…無駄だよねぇ。
セットに6億円ねぇ…甲板洗ってんじゃねぇよ! という気分だよね。

ただし、俳優陣にはうまい人もいた。圧倒的に、中村獅堂。それに、反町も京香も、仲代のおじいちゃんもまぁまぁ。ミスキャストは、一茂と本田博太郎かな。
でも、くだらない内容にもかかわらず、なぜか“感動”してしまうのは、エンディングで流れる、長渕の「クローズ・ユア・アイズ」のせいだろう。

ともあれ、私が泣いたのは、映画の力ではなく、時代の背景である。家族が誰もいなくなる戦争の悲劇、精神の荒廃、疲弊した農村の風景…いわば、この『大和』の“借景”の部分で泣いてしまうのである。


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d4ce8835.jpg[12/18 読了]1993年5月、出版芸術社刊行。私が読んだのは第1刷である。

徳川家光の御世に実際に起こった事件(「柳川一件」)を描いた小説である。タイトルに釣られて読み始めたが、予想に反して(パッチもんだと思ったが)、なかなかよくできた時代小説である。創った部分がかなり多いとは思うが、この事件に関してはほとんど知らなかったので、実に興味深く読ませてもらった。これまで鈴木の著作は、あまり読んでおらず、著者の実力をこの作品で知ることとなった。素晴らしい。

とはいうものの、巻末の参考資料の少なさからもわかるが、歴史的に正しい見方をしているか、というと明らかにそうではなさそう。ただ、家光の時代、乱世が終わり幕府の威勢が絶頂に達したこの時期、私は作者の事件に対する見解は正しいと思う。

メインは対馬藩藩主で凡庸な宗義成と、家老格で辣腕の柳川調興(しげおき)の権力争いである。調興は家康の小姓をしていた頃に幕府から直に一千石をもらった。一方では藩の禄をはむ調興は、国書偽造事件を暴き一挙に旗本に直ろうとする。紆余曲折があって、幕閣は人間的にも優れた調興に軍配を上げようとするが…。松平信綱、土井大炊、酒井忠世など当時の幕府首脳の家光に対する様子なども極めて興味深い。生まれながらの将軍が示した、だれもが予想しなかった判断とは…。

関係者のその後についても、読者の期待を裏切らず、きちんと書いている。時間を忘れる楽しい小説である。

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はっきりといって、くだらない映画である。

結末が予想できる場合、こうなって欲しいな、あぁ、やっぱりそこへいったか、良かったね、というパターンと、多分こういくな、できればそうなって欲しくないけど無理だろうな、あぁ、いってしまったか残念、というバターンがある。
そして、この作品は明らかに、後者である。結末が悪いほうに簡単にわかってしまうのだ。

ライバル同士の殺し屋ふたりが、お互いの素性を知らずに結婚、5〜6年経ったところで、それが発覚、殺しあう羽目に。ちょうど倦怠期に入る時期でもあり、それが刺激となって、再びスクラムを組んで、お互いの組織と戦う。結果、勝って、その後、ふたりは幸せな人生を歩みましたとさ、ちゃんちゃん…

あくまで、スター映画である。ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリー、二人とも今やハリウッドを代表する大スター、そしてこの作品は、二人を魅力的に描こう、描こうとし過ぎている。確かに、この点では、双方とも満足がいく出来になっているといえるが、あまりにそれに縛られ過ぎている。

全体としての評価は、あくまで良ろしくない。

アクション・シーンは面白いところもある。とくにジョリーはやはりうまい。私の大好きな『スカイ・キャプテン』での船団指揮官役も最高にカッコイイが、この作品でもピットを完全に上回るかっこ良さでスクリーンを縦横に駆け回る。

ところで、この映画、しょうむないディティールは素晴らしい。たとえば、二人の住む豪邸の様々な仕掛け。ジョリーの武器格納庫は電子レンジの中だし、ピットのそれは汚い道具小屋の地下。どうやって作ったんだろう、という楽しさがある。こういうところは、かなり凝っているので、それはそれなりに“見応え”があってグッドである。

さて、おなじみの評価点だが、ひどい作品ではあるが、ジョリーが主演ということも考慮に入れて、

ジョリーのお父さん、ジョン・ヴォイトも渋くていい俳優だねぇ…

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[12/10 DVDにて視聴完了]全81話。日本のドラマでは今、これだけ長い連続ドラマはない。単純計算で81時間、どんだけ引っ張んねんという感じだが、実際観た私としては、そんなに長いという視聴感はなかった。むしろ、最後のほうがはしょり過ぎて、まだ足りないというイメージだ。

全体からみれば、ソル・イングクという強力な個性に支配された作品といえようが、大ヒットしたのは、ただそれだけではなく、数多くの様々な要素が絡み合った結果である。高句麗の建国者である実在の人物を描いたこと、従来のテレビドラマの枠を超えた製作資金が投入されたこと、さらにその結果、豊富な俳優陣が選抜され、豪華な衣裳や贅沢なセット、長期ロケなどが実現できたことによるものであろう。

とくに俳優の個性が最大限生かされたことが、この大長編ドラマの愛された大きな理由となっている。中でも、ストイックな俳優、ソン・イルグクの存在感は相当なものである。また脇役にも恵まれた。ここにそれを書きはじめたら、どれだけ紙数があっても足りないから止めとくが、一人だけ挙げるとすれば、キム・アジュンであろう。もちろん、私の贔屓ではあるが。

彼女は、準脇役でありながら、実に爽やかで印象的だった。可愛いらしい、というより、劇中はひたすら国家に尽くす戦士の役で、笑顔とてほとんどなかったが、何か忘れられないひたむきさを常に感じた。こういう女優は大好きである。

最近になって、日本でも話題になった、韓国映画『カンナさん、大成功です!!』に主演、キュートな整形美人を見事に演じてみせてくれた。『朱蒙』との落差があまりにすごいので、両方観た私ですら、つい最近まで気づかなかったくらいである。

ドラマ自体は、高句麗の建国の歴史をフィクションを交えて綴ったものだが、今まで全く内容を知らない私にとっては実に新鮮であり、勉強になるものだった。史実は曲げられないが、うまく変化球で、観る者を楽しませてくれる史劇に仕上がっている。

面白かった。が、全部観るのに4カ月以上かかった。とにかく長い。それでも途中で投げださなかったのは、明らかに作り手の情熱が感じられたからだ。スタッフ、キャストともに、ドラマづくりを楽しんでいる。楽しくて楽しくて仕方がないという息吹きが直に伝わってくるのだ。

韓国ドラマ、これだからやめられない。

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優れたドキュメンタリーは、著者からすれば、割に合わないものである。時間と経費と労力がかかるほどには、本は売れないし、なかなか評価もされない。だもんで、ドキュメンタリーの名作というのは、小説の何十分の一も出てこない。この佐野眞一『阿片王〜満州の夜と霧』は、そうした数少ない優れたドキュメンタリーの一つとして、多分これから長い間読み継がれるに違いない名作である。

新潮社
1,800円

文句なく面白い!

物語は、太平洋戦争に突入する、しばらく前の上海、満州が舞台である。“大陸浪人”と称ばれる一団の日本人たちがいた。その多くが内地を食い詰めた、ハンパもんたちだったが、彼らの中から、いい意味でも悪い意味でも、“戦争のヒーロー”といえる人物が多数輩出した。
そのうちの代表格が、阿片による取り引きで莫大な富を築き、俗に“阿片王”とも呼ばれた、里見甫(はじめ)である。このドキュメンタリーは、現代に生存する有象無象の多くの関係者に取材、画期的な新資料も見出だして、この里見甫の知られざる姿を克明に現わしたものである。

読んでみて、まず著者の凄まじい執念を感じる。とにかく、これほどまでに熱烈に、また真摯に取材対象に向かって進んでいくというのは、誰でもができることではない。よっぽどこの里見甫に惚れ込んだのであろう。その情熱はどのページからも、まさにほとばしり出てきている。
バイタリティあふれる行動力と、失敗しても決してあきらめない忍耐力。もちろん、取材するうえでの推察力、洞察力などにも類い稀なものがある。

そして、彼の検証が正しいとすると、このドキュメンタリーの主人公、里見甫も愛すべき人物である。

「週刊新潮」の連載に、大幅に加筆されたものだが、私は連載第1回目から注目していた。というのも、“つかみ”がすごくいいのである。
東京下町のボロアパートに、ある人物を訪ねるところから始まるのだが、戦争の重要な生き証人が、まだこうして“のうのうと”実在し普通の生活をしているということに、まず衝撃を受けた。
とにかく、冒頭のこの“つかみ”は強烈である。この出だしだけで、将来の単行本購入を決めたのたから。
本当はここでストーリーを明かしたいが、長くなるし、まっ、やめておこう。だけど、絶対に読んで損はない作品である。それだけは保証していい。里見甫はもちろん、その周囲に現れる魑魅魍魎のような人々の、いいしれない魅力、そしてその人生の光と影…。とくに最後まで正体の知れない男装の麗人(当然、女性だ)とは誰か、里見とはどういう関係だったのか? などは、下手な小説など吹っ飛ぶ、想像を絶する展開で大いにうならせる。

さて、どうだろう?

とにかく面白い!
読んでおくれ!

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c3c52dcf.jpg[12/8 読了]浅田の小説群の中でも、最高の出来だといっていい作品。見たこともない近世中国の世界がまさに眼前に広がる。とても想像90%のフィクションとは思えないほどリアリスティックに描くのは、彼がライフワークとしている題材だけのことはある。

読んでいる間は、夢のように過ぎてしまう。ページを閉じた時に、心地良さを味わうより、喪失感のほうが先にきてしまうのは、やはり浅田の“うまさ”であるのか。登場人物たちの息吹きが、いつまでも心のどこかを占め続けるのは、エンターテイナーとしては誇れる実力であろう。

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[12/6 地上波テレビをリアルタイムで鑑賞] 副題は「清朝王女から美貌の女スパイへ! 男女二つの顔で激動の日中戦乱を生きた華麗なる42年! 悲劇の皇女処刑60年衝撃の実話」っと、なが〜。これだけで内容が概ね把握できてしまうから恐い。もちろん希代の女傑として有名な“東洋のマタ・ハリ”川島芳子の生涯を扱ったドラマである。原作は村松友視、父の稍風は川島を売り出した『男装の麗人』の作者である。脚本は大石静が担当している。

八木優希、黒木メイサ、真矢みきと、川島芳子を演じる女優陣の健闘が光る。とくに一番の長丁場を担当した黒木の成長ぶりには度肝を抜かれる。前から上手い役者だとは思っていたが、老獪な平幹二朗を相手にここまでの熱演には、ただただ感動するしかない。

彼女の魅力は、個性あるエキセントリックな顔立ちもあるが、それより何より物おじしない堂々たる立ち居振る舞いにある。この若さからは想像もできない、全身から立ちのぼる女優としてのオーラは、努力しても凡才ではとても出せるものではない。

この時代が好きだ。魔都といわれた上海。こんな異質な世界観が存在した場所はかつてなかった。戦争は嫌いだが、この時代の持つ雰囲気には憧れてしまう。だからもちろん、当時を舞台にした小説や映画も大好き。今回の作品にもそうした強い思い入れがある。

全体的にそつなく仕上げられているのが気に入った。贔屓の堀北真希演ずる李香蘭の出番が短すぎるとか、真矢みき演ずる42才の川島の処刑シーンが淡泊過ぎるなど、細かい瑕疵が若干気になるが、予算の限られたテレビでここまでできたら誉めなくては。演出の藤田明二とかもなかなかやるでねえの。

明らかに水準を超えた作品で、見応えがあった。

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09fe4a33.jpg[12/6 アポロシネマ8にて鑑賞] 金券屋にて、なんと300円で入場券を入手、どこから回ってきたのか知らないが、こんな安い券初めてである。ちゃんと東映の検印もあるし、どういうルートで出されたのか大いに気になる。この安い券がこの作品の好調な興行成績を支えているとしたら、すごく悲しいことである。

また堤幸彦かぁ〜、と思わず溜め息が出てしまう。よくもこれだけどんどこどんどこ撮れるものだな、と感心するが、当初の粗い演出から考えると最近レベルはかなり向上してきている。『大帝の剣』で消えるな、と思っていた小者が、トリックシリーズや『20世紀少年』を経て、ひと回り大きくなった感じだ。

特段、冴えた演出ではないが、その平凡さが逆に役者たちの個性を輝かす思わぬ効果を上げている。老練な吉永小百合や達者な竹中直人などを御するのに下手な演出は必要なし。演じる側に任せるのがベストであろう。その点、堤は見事に黒子に徹している。

実在した宮崎康平、人もその著作も知っていたが、元々は実業家(宮崎交通社長)だというのは、この映画を観て初めて知った。まさに予想外の経歴である。しかも趣味が高じて、社長を解任されるに至っては、実業家というより変人、偏執狂ではないか。

妻(吉永)との出会いも劇的で感動的である。が、それでありながら、ごく自然に結婚へと繋がっていく。このあたりは、さすがに実話だけあって、とくに違和感はない。そして、いよいよ夫婦での邪馬台国探しが始まるのだが…

著作は古代史に衝撃を与え、ベストセラーにもなるが夫婦の旅は続く。その途中、竹中は吉永に言う。「本当は邪馬台国などどうでもいいんじゃ、お前と二人でこうして旅ができれば…」その告白に少しも嫌味がない。実に自然だ。

予想以上に完成度が高いのでびっくり。山崎貴のSFXも秀逸である。

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